ドアヒンジの鋳造製・プレス製どっちが良いのか問題
ブログ読者さんからのコメントで「ドアヒンジが鋳造製とそうでないものの差を説明して」というリクエストが有りましたので、画像で解説したいと思います。
意外と知られていない、ドアヒンジの品質の差ですが、改めて画像で説明してみたいと思います。

ご興味ある方は続きをどうぞ。
鋳造製ヒンジとは?
そもそもヒンジとは、車のドアとボディを接合している蝶番(ちょうつがい)のこと。
国産車の多くは、プレス成形したヒンジを使っています。

金属の板を曲げてドアを支えるパーツを作り出しています。
なので中は空洞になっています。
一昔前のプレス成形されたドアヒンジで造りが粗悪な場合、ドア自体の重さで若干変形したりして微妙なズレによって、ドアの閉まりが悪くなったり、ボディとのスキマのチリが一定じゃなかったりすることもありました(アメ車あるある)。
最近では、プレスヒンジでもそこまで酷いものはないと思いますし、国産車ではそんな事例はほぼないはずです。
どうしてプレス成形したヒンジが使われるかというと、見えないところの部品であることと、重量、そしてコスト面での理由が大きいと考えられます。
国産車の多くがプレス成形したヒンジを採用していますが、国産基準のボディ剛性は満たしているからプレス成形のヒンジでも十分という判断なのだと思います。
しかし、一方で、ドイツ車勢はほぼ鋳造製ヒンジが採用されています。
アウトバーンで200km/h以上で飛ばしたり、日本の基準よりも高いボディ剛性が要求されているのかもしれません。
なので、フォルクスワーゲンの小型車UP!でさえ、鋳造製ヒンジを使っているというのはワンダー速報でも既報の通り。

こちらがUP!のドアヒンジです。
フォルクスワーゲンを始め、メルセデスやBMW、アウディに至るまで、ほぼすべてのドイツ車では鋳造製ヒンジが使われています。
私が試乗などをした中で、プレス成形したヒンジが使われていたのは、メルセデスのスマートくらい。

上記はスマートのドアヒンジです。
UP!では鋳造製ヒンジなのに、スマートはプレスヒンジなんですね。
その辺りはメーカーの拘りなのかもしれません。
ちなみに国産車だと、最近になってレクサス車でも鋳造製ヒンジが採用されるようになっています。
LSはさすがにモデルチェンジ前から鋳造製ヒンジでしたが、2017年のフルモデルチェンジ以降でも鋳造製ヒンジが採用されています。

やはりコストが掛かっても、鋳造製ヒンジを採用した方がいいという判断なのでしょう。
これについて、開発者の方に聞く機会がありましたが、ボディのチリを超厳密に合わせるためには鋳造ヒンジを使っているとのこと。
さらに、ドアを閉めた際の音なども変わってくるとのことで、特にLSではフラッシュサーフィスというBピラーとドアガラス面がツライチで合うデザイン処理などもしている関係でヒンジには特にこだわったとのこと。

LSでは製法だけでなく、上ヒンジと下ヒンジの個体差の細かい数値も計測して、相性の良い組み合わせを選んでいるとのこと。そこまで徹底されてるとは知りませんでした。
あと、ドア自体の重さにより選ぶ製法も変わるとのことで、何故かドアの重いRXや、クーペのRC・LCなどはそれも納得です。
レクサス車でも、鋳造製ヒンジを採用しているのは、RX、LC、RC、GS F、UXくらいだったと思います。
LXはプレスヒンジでした↓

NXもプレスヒンジです。
RXとNXがコストのかけ方が違うなと思うのは、そういう見えないところの差もあります。
ちなみに、新型クラウンもプレスヒンジでした。

TNGAになった新型クラウンのフルモデルチェンジだけに、こうした見えないところにもコストを掛けてくるかと期待していたんですが、レクサスとの明確な違いとして現れていました。

実際、どの程度のボディ剛性の差があるのかは私にはわかりませんが、ドイツプレミアム勢やレクサスが採用しているには、それなりに理由があるからなのだと思います。
私が知る限りでは、国産車で鋳造ヒンジを採用しているのは
・トヨタセンチュリー
・レクサスLS
・レクサスLC
・レクサスRC
・レクサスRC F
・レクサスGS F
・レクサスRX
・レクサスUX
・日産スカイライン(リアドアのみ)
・日産GT-R
など。
やはり高価格帯やスポーツ上位車種などに採用されています。
よく「ヒンジによって違いはない」というコメントも見かけますが、本当に意味がないならGT-Rやセンチュリーなどに使われる理由もないはず。
やはり日常領域を超えた、さらに上の質感を求めるなら鋳造製や鍛造製のほうが良いということでしょう。

↑日産GT-Rのヒンジ
ドアを閉めたときの重厚感などにも効いてくるとのことですが、たしかに鋳造ヒンジのほうが「ガチャン」というような金属質な音がする気がします(プラシーボ効果w)。
ドイツ車以外では、プジョーやシトロエンでも鋳造製ヒンジはほとんど使われていません。
でも、ボルボやジャガー・ランドローバーでは鋳造ヒンジでした。

↑ディフェンダーのヒンジ
ちなみに、Motor Fan illustrated Vol.130「剛性」と「強度」の号にて、鋳造ヒンジについて詳しく書かれていましたが、たしかにボディ剛性に効いてくるようでした。
ご興味ある方は、読んでみては?
私はアマゾンアンリミテッドで読みました(笑)
と言った感じで、鋳造製ヒンジとプレスヒンジの見た目の違いと、その差について簡単にまとめてみました。
詳しい人がいたら教えてください(笑)
意外と知られていない、鋳造ヒンジとプレスヒンジの違いについてまとめてみました!
参考になれば幸いです。
かんたん車査定ガイド



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コメント
- 勉強になりますφ(..)
これ自分も知りたかったんですよね。
ヒンジってこれのことかφ(..)
- ありがとうございました!
- こんにちは。いつも楽しく拝見させて頂いてます。
以前の新型クラウンの記事に、解説の希望をコメントした者です。
早速の解説記事の投稿ほんとうにありがとうございます!
おかげでよく理解することができました!
私はRX(後期)乗りなんですが、購入以前からほぼ毎日このブログをチェックしてます。
もうちょっとしたらRXの3列が出て来るかと思いますが、ワンダー速報でのレビューを期待しております。
- 古いドイツ車のしっかりしたドアは鋳造ヒンジならでは
- ドラヨスさん、こんばんは!
鋳造ヒンジは車が古くなると明らかな違いが出てきますね。20年以上前のドイツ車、中でもメルセデス・ベンツのドアがしっかり閉まるのは、そのドア構造の賜物でしょう。対して、プレスヒンジの日本車では、ほんの10年オチ足らずなのに、ドアの感触が安っぽくなってしまった個体もよく見ます。安っぽくなったといいますか、運転席ドアと他のドアの占める感触が明らかに違うという。
新車時でも、ドア開け閉めの感触に結構差があると思います。ドラヨスさんは「ブラインドテストしたらわからない自信」と謙遜しておられますが、意外とわかると思います(笑)
個人的には新型クラウンがプレスヒンジというのが非常に残念ですね。そういえば北米VWディーラーのプロモーションビデオでは、開けたドアに巨漢の営業マンがよじ登りドアの頑丈さを示すという、いささか荒っぽいアピールをしていました(笑)
- Re: タイトルなし
- ディーゼルHVさん、コメントありがとうございます。
いえいえ、参考になれば幸いです(^ ^)
ヒンジは気にしてる人も多いので、意識して見てみると面白いですよ(^ ^)
- Re: ありがとうございました!
- ワンダーな名無しさんコメントありがとうございます。
リクエストにお応えしました(^ ^)
参考になれば幸いです。
RX3列シートも注目してます。
見た目はほとんど変わらないみたいですね。
- Re: 古いドイツ車のしっかりしたドアは鋳造ヒンジならでは
- Coptic_Light さん、コメントありがとうございます。
以前はドアのチリが左右で違ってる国産車もたまにありました、
やはり鋳造製のほうが良いのでしょうね。
ドアの開閉音は、ヒンジではなく間のゴムなどによっても変わるので、意外とマツダとか良い音するんですよね。
miniは、金属音っぽい音だったと記憶してます。
トヨタとレクサスではそう言うところで差別化してるんですね。
- モーターファンvolume130の剛性と強度でドアヒンジの違いについて詳しく書いてありました。
面白かったです。
- Re: タイトルなし
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
おお!
それは興味深いですね。
私も読んでみます!
情報ありがとうございました!
- 鋳造ってよりは鍛造ではないんでしょうか?
鍛造も鋳物だからおなじるいなのかもしれませんが。
- このあたりホント曖昧なとこで、ドアの重さ、音重厚感みたいな布教はやめにしたほうが良いのではないかと思います。
安全性は、NCAP、JNCAPで示されている通り、そんなパーツどうこうの話ではないように、、、、、
- ワンダーさんが載ってるUXも鋳造ヒンジでしたよね‥?
あの子拗ねちゃいますよ(笑)
- Re: タイトルなし
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
鍛造のものもあるのかもしれませんが、目視ではわからないので、広義での鋳造ということです。
- Re: タイトルなし
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
UXも鋳造ヒンジですね。
もちろん忘れてませんよ^^
- Re: タイトルなし
- あんどさん、コメントありがとうございます。
安全性の問題ではなく、ボディ剛性の問題だと思うのですが…
もちろん、プレスヒンジでも安全性はクリアしています。
その上の領域の話だと思います。
実際問題、どちらでも同じなら、レクサスの上位車種やセンチュリーでは鋳造ヒンジを使っている理由にはならないと思います。
- 80
- ドアヒンジの県ですが、80スープラも鋳造ヒンジです。当時、セルシオと80スープラでしか、見ません。20数年間の愛車でした。当時は、見えない所にもコストをかけていました。ついでですが、インナーフェンダー、バンパーなどクリップでなく、アルミ合金のボルトが使われていました。
利点は、重いドアを長期にわたって支えてくれる。実際、24年乗りましたが、ドア落ちはありませんでした。後は、閉めた時のボディ剛性に貢献しています。
- Re: 80
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
やはりトヨタでもココぞというクルマには鋳造ヒンジを使っているということはそれなりに意味があるんでしょうね。
- これは実際にメーカーのエンジニアの方に聞いてみないと分からないでしょうね。
下記のような記事を見つけました。
https://www.google.com/amp/s/motor-fan.jp/tech/amp/10000585
ここに書いてある歴史的な部分と、最近国産の一部車種で使ってるのは剛性的な意味ではなく、マーケティング的な意味が強いのではないでしょうか?
ヨーロッパでの販売を重視するモデルは鋳造にしているように感じます。
少なくともコストの問題ではないと思いますよ。
コストであればLXに採用されていない理由が付きませんし。
- No title
- いつも楽しく拝見しております。私の知る限り、クラウンは17、18、20(リアのみ)鋳造でした。つまり、徐々に、バレないように質を落としてるわけですね(笑)。スカイラインもですが、リアのみ採用するのは目に入りやすい位置だからという理由もあるかと思います。剛性はドアキャッチ側も高い必要があるので、一概には判定できないでしょうが、設計者の志の高さが反映される部分だと、勝手に考えています。
あと、お願いなのですが、新型車のレポートの際に、フロアカーペットの質も知りたいです。71マークⅡなどの時代は本当に高品質でしたが、最近は上級車でもフェルトのようなカーペットが増えてる気がします。宜しくお願いします。
- No title
- いつも動画を楽しく拝見しております。
私の知る限り、ドアが重い車種については鋳造の方が長期的にドアが下がりにくい印象です。つまり2ドアクーペかつ高級スピーカーを装着しドアが重い車種などは、鋳造が必要なはずです。例えばレクサスLCなどをプレスヒンジにすると、10年後にはかなりドアが下がってしまうと思います。
LXがプレスなのは、ベースがトヨタのランクルですし、4ドアかつ設計が古いことに起因していると推察されます。
ボディ剛性への影響は、ドアそのものに剛性があるならば、効果があるはずです。車種によりけりなのでは?
- UXも鍛造ヒンジだと知っていて、NXの鋳造ヒンジをRXとNXのランクの差というのはなぜでしょうか?
単なる発売時期の差の気がするのですが?
何か意図があって
- Re: タイトルなし
- けいまんさん、コメントありがとうございます。
ドアの組付けの製造工程によって、鋳造ヒンジじゃないといけないとかの理由はあるようです。
ただ、トヨタやレクサス、日産も一部上級車種に採用するなどなんらかの理由はあるんだと思います。
- Re: No title
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
現行型クラウンはドアの内張り剥がしたりするとかなりがっかりするくらいコストダウンされているとのこと。
鋳造ヒンジを日本で使用するのは、ブランディング的な意味も強そうですね。ようは見栄えの部分です。
フロアカーペットに関しては私はむとんちゃくなので、正直そこまで差がわかりません^^;
- Re: No title
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、経年劣化を避ける意味で鋳造製が使われていた経緯はあるみたいですね。
昔、VWでクルマを買う時にそのように説明を受けた記憶があります。
アメ車とか、ドアのチリが傾いてるなんてことはよくあるみたいですが…
LXの推察は私も同様です。必要十分の剛性はプレスヒンジでも出していて、それ以上の部分を追求する場合は鋳造製を使うのでは?と考えていますが、今度メーカーの人と話す機会があれば聞いてみます。
- Re: タイトルなし
- ワンダーな名無しさん、コメントありがとうございます。
発売時期というか、車種に対する思想(こだわり)な気がします。
事実、RXより後発のESではプレスヒンジですし。
どこまでの質感を求めるか、それを許容するかどうかな気がしますが、機会があればメーカーの方に聞いてみたいと思います。
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